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○第1話 反逆の前に現るモノ

「…やっと見つけたぞ、皇冥院・醒迦(コウメイイン・セイカ)」
そう銀色の少女は黒い少女に言った。
銀色の少女は異様な姿をしていた。
銀色の肌、銀色の髪、背には銀色の翼、尖った耳と犬歯、
さらに両腕に腕輪、紅い石のネックレス、そして顔の上半分を被う仮面。
そのどれもが黒ずんだ銀色の金属で出来ている。
その銀の中で仮面から覗く瞳だけが蒼い。
「矢張り余に魔法の行使は余り向いておらんか…しかし今回も同じ様な事を行おうと思うか…」
「誰?話が見えないんだけど?」
と、黒ずくめ、いやよく見ると暗い紫色の髪をした少女、皇冥院・醒迦は銀の少女に問い掛けた。
「名前くらいは名乗っておこう。エルヴェイル・ケルディニフィツ・ヴェートラクト・アルクレイルだ。お前の前世…いや、お前には関係の無いことだな」
「務めを果たしに来た。お前とよく似た人物から預かっていた物を渡しに、いや返しに来たというべきか」
「異端異法異本。使う使わないは自由だ」
そう言って金属板で装丁され、紅と蒼と紫の宝石が飾られた黒い本を醒迦に渡す。
「前世?務め?返しに?」
「死に損ないが余計な事をしに来ただけだ。解らなくて良い」
「ただ…世界に戦いを挑む者が持つべきだと思ってな」
「それとこれはオルファリア・ハルトルムからだ」
今度は紅い半透明の大剣を渡す。
「混沌より創られし剣、赫冥(カクメイ)。取り敢えずこれも渡して置こう」
「さて、取り敢えず渡すべきものは渡した。いずれまた会おう、世界の敵」
そう言って彼女は翼を広げ飛び去った。
「…何で…私のやろうとしている事を知っているの…」
剣と本を手に1人彼女は呟いた。


○第2話 其は虚ろな宇宙に舞いて

 果てなく深く広い星の海。
強大なる超兵器もソレの前には無力だった。
「…此れだけの力を持ってしても、遠く及ばぬと言うのか…!」
「…ヴェ…ル、脱出しろ、総員退艦」
私であって私で無い誰かが言った。
「お前を置いて行けというのか?」
そう傍らの少女は答えた。
「そうだ。…星の異端者よ、もう十分だ。我が無謀に付き合う必要は無い。コイツを乗せて撤退しろ」
そうして少女に黒い本を押し付ける。
「出ろ、レーヴァディヴェイド」
異形の機神を召喚し黒い船が去るのを見届けてソレに向き直し言い放つ。
「我は世界の敵、貴様を滅するモノ!!!」
辺りが光に包まれる…

………

 気が付けば辺りが暗い。
どうやら眠っていたようだ。
何か夢を見ていて、それが重大な事だった気がするが思い出せない。
…それにしても寒いし体の節々が痛い。
矢張りまともなところで寝るべきなのだろう。
「行かないと…」
あまり長い間此処に留まっていると奴らに嗅ぎ付けられる恐れが有る。
そう思い私は本を持って立ち上がった。


○第3話 機械の刻と憎悪の詩 其の壱

 「…もう嗅ぎ付けて来たか、創造主の犬」
周りを取り囲む者達にエルヴェイルは言った。
「世界の敵を処断する…」
一人が言った。
「…人形か。雑魚は消えろ」
その言葉とともに遥か上空から無数の光が降り注ぐ。
辺りに無数のクレーターが出来、そいつ等が消し飛び、戦闘、
いや、戦闘にすらならない一方的な殺戮が終わった。
辺りに立ち込める煙の中、
先程消された者達と同じフードに仮面といういでたちだが明らかに違う雰囲気の者が現れた。
「全く見境が無い、地上であのようなモノを使用するとは。」
「矢張りお前は早急に粛清せねばならぬ。世界の法と平和を守る為に」
と、そいつは言った。
「こんな世界の秩序に何の意味が有る?」
「貴様如きに、人形風情にわかるわけ無いだろうがな。余にとってはこんな世界がどうなろうと人間が幾ら死のうと知った事ではない」
憎悪と、嘲りと、幾らかの憐憫を込めて、吐き捨てる様に彼女は言った。
「さあ、かかって来い。相手をしてやる。来い、天冥ノ骸」
大砲とも大剣ともつかない2m強のモノが彼女の手の中に現れ、衣服が変形し両肩に竜頭の付いた鎧となる。
フードと仮面の人物…"使徒"も手に剣を召喚する。


○第4話 "無題"

 焦土。荒野。廃墟。
バラバラになった人間とおぼしき残骸が辺りに散ばり、あちこちで炎が燻っている。
その中心に銀色の何かがあった。
繭…もしくは蛹か。見たところそういう感じの物体だ。
銀色のソレは微動だにせずに其処に鎮座している。
どれほどの時が経っただろうか、辺りの炎が消え、さらに後、
銀色の物体に変化が現れた。
物凄い勢いで翼の様なモノが生え、無数のひびが入り始めた。
瞬く間にひびが全体に広がり砕け散り、破片は空中で銀色の粒子となって虚空に消える。
それは美しく幻想的で…おぞましい光景。
辺りに舞い散る銀の粒子が消え、中から機械的でありながら有機的な装甲の様な物を纏った少女が姿を現す。
体の各部を被う銀と蒼の装甲の各部が明滅し、少女の目が開かれる。
青く藍く蒼い深淵の如き眸が。
「ふむ、侵食が完了したか」
暫く手足を動かし感覚を確かめる。
「余の姿が保たれているとは…恐らくヒトの遺伝子を取り込んでおくとソレを基調にするのだろう」
「まあ、姿などどうでも良い」
「重要なのはアレに挑むまでにどれ程の力を得れるかだ」
その言葉とともに装甲が変化を始める。
背に機械で構成された竜の翼が6枚生え、両肩の装甲が巨大な竜の頭に変化を遂げる。
さらに各部が変化し両腕にクロー、両脚にブースターが生え、リアスカートアーマーが肥大化する。
3秒ほどで変化を終えると彼女は言った。
「問題は無い様だな」
そして廃墟から飛び去った。


○第5話 闘争の刻、再臨

「たとえ似た経験をしていたとしても───私とお前たちが皆違う存在である以上それは違う体験だ。
故に誰も私の狂気と憎悪と絶望を真に理解出来はしない。
───だから…誰にも邪魔はさせん、かつての仲間であろうと躊躇いはしない」─── 神紅鵺



 夜───闇に棲むモノ達の時間。
昏い闇の中街は光を放っている。
或る高層ビルの屋上、貯水タンクや空調設備の間にエルヴェイルは立っていた。
「90年程度では大して変わらんか…余には関係無いがな」
「……」
沈黙ししばし町並みを眺める。
「…む?誰だ、そこに居るのは」
何時からそこに居たのか貯水タンクの影から青髪青瞳の優男が姿を現す。
「…」
一瞬何か違和感を感じるがすぐに消えた。
恐らく気のせいだったのだろうと思い、再度名を問う。
「俺はホメロスだ。よろしくな、嬢ちゃん」
なぜか妙に馴れ馴れしく男───ホメロスは答えた。
「……嬢ちゃんはどうかと思うがな…」
「やっぱりそうか、ならエルヴェイル」
「何故余の名を知っている?」
「その大砲に書いてるし、お前の名前結構有名だぜ」
「どこで有─」
爆発音と振動に遮られる。
「チィッ、醒迦か?」
爆発はこのビルで起こった様だ。
このビルはホテルで政府高官が泊まっていた筈だ。
爆発のあった階からガラスを突き破り人影が出てくる。
人影に月光が当たりその姿が明らかになる───醒迦だ。
その背には蟲の翅がある。
羽を震わせ、その場から飛び去ろうとした時、地上からサーチライトの光と無数の銃弾が襲い掛かった。
あらかじめ展開していた自衛隊の部隊だ。
銃声が鳴り響いた次の瞬間、醒迦の周りの空間が歪みエルヴェイルにとっては懐かしい機体が姿を現した。
「レーヴァディヴェイド…」
懐かしいソレの名を彼女は呟いた。



 銃声。体にサーチライトの光が当てられる。
危険を感じた瞬間頭に浮かんだそのプロセスを実行する。
「本」をゲートとし時限の狭間に接続。
呪文詠唱を省略。
ソレの名を呼び実空間に実体化させる。
初めての筈だが、やり方は解った。
次の瞬間実体化したソレのコックピットに収まっている。
動かし方も知っている。
問題は無い。あの程度なら殲滅可能だ。
「ブルタールヒンメル」
超重力発生術式稼働。
レーヴァディヴェイドから辺りに重力波が放たれる。
周りのビルが歪み、拉げて行く。地上の兵器と兵士達が押し潰される。
「全滅は…出来なかった」
まあ良い。目的は果たしたのだから離脱しよう。



 エルヴェイルはレーヴァディヴェイドの放った重力波を防ぎ、
そこでいつの間にかホメロスの姿が見えない事に気付く。
いつの間に消えたのか気にはなるが、今は脱出が先決だ。
脱出しようと翼を展開した所で砲声が響く。自衛隊の増援の様だ。
「チッ」
今動くのはまずい、そう判断し動きを止めた所で、突然上空に影が現れ月光が遮られる。
黒い異形の宇宙船───シュテルンケッツァーだ。
艦底部の砲塔が稼働し光線が地上に降り注ぐ。自衛隊機が爆発し、残骸が撒き散らされる。クレーターが出来る。



 如月は上空に現れた艦を見て驚愕し、しかし放たれる破壊光線をかわしきっていた。
「シュテルンケッツァー!?ククク…こんなところにも死に損ないとはな」
隣にいた葵機がミサイルとビームランチャーを放つ。しかしそれはバリアに阻まれて届かない。
「効いてないっ!?」



 ミラニアルトは下から攻撃を放った葵の機体───睡蓮改と如月の機体───碧蓮を見て驚いていた。
シュテルンを見て驚いた如月と同じように。
「あれはファコルツの…何故此処に…」
一瞬手が止まるがすぐに動き出す。だがその隙にもシュテルンに地上からの攻撃は有効打を与えられない。
「彼らがこの時代に生きているはずは……!エルヴェイル代行。回収に来ました。15秒後に転送を行います」
「少々派手にやり過ぎだ」
エルヴェイルが通信に答える。
「他星系から正体不明の艦隊が接近中。緊急を要すると判断したため強行手段を取りました」
座標確認。転送プロセス開始。
エルヴェイルを転送で収容する。



 自衛隊の部隊の注意が逸れている隙を見て醒迦は機体を加速させ、戦場から離脱した。
数機の機動兵器が追撃してくるが速度が違いすぎて見る見るうちに引き離されていく。
シュテルンを攻撃していた機体も半数以上が撃破されている。
なおも葵はランチャーを連射するが上空のシュテルンはバリアを複合させることによりその攻撃を防ぎきる。
「くそっ、こうなったら」
システムの起動スイッチを押す。
マバロハーレイ起動。稼動限界まで5分。
モニターに警告メッセージとタイムリミットが表示され先程までの速度を大きく上回る高速で機体が駆ける。
ミサイルを一斉発射し、多目的ランチャーからビームと実体弾を同時発射。
シュテルンより放たれたレールガンをビームで撃ち落し、更に射撃。
この間もレーザーやレールガンが撃たれているが全てかわしきる。
バリアが激しく発光する。過負荷がかかっているのだろう。
「このまま一気に押し切れば…」
残存していた機体も攻撃を再開する。
このままバリアが消滅するかと思われた矢先、再びバリアが展開される。
シュテルンのバリアジェネレータは計5基。つまり、別のジェネレータに切り替えたのだ。
「速い…リミッター解除でもしたのか?」
「ツェーンゲボーテ1番停止、2・3番起動。出力60%に設定。ブラオシルトを優先的に当該目標のからの攻撃に回せ。
余剰ナノマシンを散布開始。
攻撃設定はシュテルン自身の判断で設定」
(A~C、F~Hの優先度を低下。D、Eの優先度を上昇。砲塔の稼動パターンを変更。
高度を20m上昇。フィールド位相再設定。ツァウバードラッヘ6機射出。機動パターンランダム)
シュテルンが攻撃パターンを変更する。
先程とは攻撃パターンを変更し、更にビットと砲塔の直接制御による砲撃で逃げ場を奪っていく。
周囲にレーザーを放ち、逃げ場を無くした上で高威力の攻撃を行う。
葵は咄嗟にミサイルとランチャーで弾幕を張り最大速度で回避機動を行った。
かわしきれず右足に被弾。間髪を入れずに次の攻撃。右肩を1発掠め、左腕に2発被弾。
「うわぁっ」
やられる、そう思ったが次の攻撃は如月の放った攻撃によってとめられていた。



「ミラニアルト、奴等と戦闘する必要は無い、引くぞ」
「元々この艦は宇宙用だ。これ以上は負荷が大きい」
「…了解」



 突如攻撃を止め、シュテルンが離脱して行く。
部隊の被害はかなり大きい。偉い人たちが頭を抱えるのかも知れないが知った事ではない。
飛び去るシュテルンを見ながら如月は悲願達成の刻が来たと思い、ある計画を思いついた。
幾度もそれを夢見、叶わなかった。だが今度こそは…



その頃、何隻もの艦隊が地球圏を目指して進んで来ていた。
幾つかの組織も動き出していた。
地球に幾度と無く吹き荒れた戦乱の嵐がまた巻き起ころうとしていた…


○第6話 究極へ至るモノ

 シュテルンは一旦日本から離脱し、ロシアに向かっていた。
途中領空侵犯で韓国、北朝鮮、中国軍から攻撃を受けたが戦闘と呼べる物すら起こらなかった。
先の自衛隊もだが、別に彼らが弱かったわけでも無能だったわけでもなく──単純に兵器の性能の差である。
現行の地球の兵器では全長10kmもの巨大な恒星間侵攻船に有効な攻撃手段は無い。
故にそれは一方的な蹂躙にしかなり得ない。
進路上の敵機を蹴散らしてシュテルンは北上する。
蹴散らされた彼らの多くはこう思っていた。
すなわち、
「何の冗談だ、あれは?」
余りに出鱈目過ぎて現実感が無い。
シュテルンケッツァーという嵐が過ぎ去った後、呆然としていた彼らは我に返り、軍上層部は被害総額に愕然とした。



──シュテルン艦内──食堂。
シュテルンの人は少ないのに妙に広い。なぜこの艦に大食堂があるのかは謎だが…
そこで4人?が話していた。
何故疑問形かというと一人は幽霊だからである。
その4人の一人エルヴェイルは、日本降下からわずか1日程度でこうも来訪者が現れるとは思っていなかったが、
見た目には落ち着いて彼らと話していた。(エルヴェイルが驚いたりうろたえたりした事は殆ど無い訳だが)
「・・・そうかカークとクリスタルの…協力、感謝する」
そういって2人組に一礼。
「気にしなくていい。大祖父の知人が戦っているのなら手を貸すべきだと思ってな」
そう男──少年と呼んでも差し支えないかもしれない年齢だが──が答える。
「私、レイウッド・五月雨とライムはシュテルンケッツァーに協力する」
瀬戸内海付近から先ほどまでの戦いぶりを見る限り彼らの戦術能力は優秀なようだ。
かつては強大な戦力を誇ったシュテルン艦隊も今は殆ど失われてしまった。
その様な時に戦力が増えるのは喜ばしい事だろう。
それにミリスヴェリア・ミーファルティア・ミラニアルト以外と話すのは久し振りだ。
「見てのとおり戦力が少ないのでな。協力はありがたい。それで戦力を補うために余の一族の研究所跡から何か拾えぬかと思って向かうところだったわけだ」
「研究所後?そこに何かあるのですか? 」
ライムが疑問を口にする。
「何かあると良いな、という希望に過ぎん。アルクレイル族は様々な研究を行ってきたから恐らく何かあるとは思うが」
「アルクレイル族まで敵に回して問題ないのか?わが子孫よ」
今まで黙っていた幽霊──エルヴェイルと何処と無く似ている少女の姿をしている──がエルヴェイルに質問する。
「既に90年以上前に敵対していることは貴女も知っているはずだが? 」
と、エルヴェイル。
「元々数が少ないからたいした脅威にはならんはずだ。それに余にとっては奴らなどどうでもいい」
「神紅鵺の為なら同族だろうと殺す」
恐ろしいことを平然と言ってのける。
「ほう、昔のお前からは想像もつかん変わり様だ。よもや上位種から反逆者が現れるとはこの愚行を始めた馬鹿供も思いもよらなかっただろう」
何故か愉しそうに幽霊は言った。
「って、さっきから気になっていたんだが…誰? 」
「む、そういえば名乗っていなかったか」
霊体なのに無意味に手をポンと打ち名乗る。
「アルクレイル族の原型体スィルヴァフィル・アスティフィス・シルバロッテ・ジィルヴェローテ・コーディニウシュ・エンデュロス・ヴェートラー・アルクレイルだ」
ここでも特に意味を持たない振り付け。割と目立ちたがり屋なのだろうか?
「エルヴェイルの先祖にあたり、アルクレイル族が馬鹿な真似を始める原因であって最初の実験台でもある」
何故か妙に偉そうな雰囲気なのはエルヴェイルの先祖だからだろう。
「どれ位になるかは判らんがよろしく頼む」
何故か仰々しくスィルヴァフィルは名乗った。
「こちらこそよろしく頼む」
何か突込みどころが満載な気がしないでもないが深く追求しないでおく。
「む、敵勢力圏内だ。ロシア軍を排除してからアルクレイル族秘密研究所跡に向かう。そちらの戦力は不明だ」
「センサーに反応。敵部隊接近中です」
ミラニアルトが放送で敵接近を知らせる。



40分後…2096年6月17日14時20分
シベリア某所、アルクレイル族秘密研究所跡付近…
移動中の不明機を撃墜するために出撃したロシア軍をシュテルンが射程に捉えた。
ロシア軍側からはまだ射程距離外だ。
一応シュテルンに警告を送るが当然無視される。
全軍敵を射程内に捉え次第攻撃開始。
ミサイルや砲弾がシュテルンへと迫り、全てバリアに防がれる。
「日本、韓国、北朝鮮、中国での結果は知っているだろうに…無駄な事を」
「各砲門射程内の敵に攻撃、その後ダーゲスアンブルフ10発発射」
レーザー、ビーム、重力波、実体弾、魔力波が放たれ、戦闘機や戦車を撃破する。
「どうせ今回も一方的な戦いになるのだろうな…」
モニターを眺めながらつまらなさそうにエルヴェイルは呟いた。
自動で照準が合わせられ砲撃が行われる。
「一部動きが良いのがいるが、性能差が有り過ぎる。自動モードで15分程度か」
「…む? 」
敵陣から翼を持つ白い人型の機体が進み出てくる。
人造の人型機動兵器とは違う雰囲気のそれをエルヴェイルは油断無く見て、
「ネフィリムか。テンプルムに協力を要請するとは、形振り構ってられぬと言う事か」
「…神魔のモノは通常兵器には耐性を持つ。だが空間ごと砕かれては無事と言う訳にはいくまい」
「ツェアシュテーレンヴェルト・リミット、チャージ」
「了解」
エルヴェイルの命に答え、ミラニアルトが空間破壊砲のチャージを開始する。
「我々は本当に何もしなくていいのか? 」
レイウッドからの通信にエルヴェイルは答える。
「正面からの敵などシュテルンだけで十分だ。本当の戦いは研究所内に突入してからだ」
「ツェアシュテーレンヴェルト発射! 」
シュテルンの艦首より空間破壊砲が放たれる。
空間が砕かれて行き、その後世界の修復力によって再構築されながら破壊は進んで行く。
そのときの余波が衝撃波となって斜線周囲の敵機を吹き飛ばし、破壊そのものが危険を感じて咄嗟に回避行動をとったネフィリムの右足を吹き飛ばす。
バランスを崩し地面に落ちるが墜落など効果は無いだろう。
「モーントディヒター発射」
魔力砲ですかさず追撃をかける。
装甲に損傷を与えたようだがまだ倒すのは足りない。
「ちぃ…第2射! 」
再度魔力砲が放たれる。
かわされるがエルヴェイルはそれを見てにやりと笑い、
「かかった。ゴットリヒフェアツヴァイフルング発射」
高速空間破壊ミサイルが放たれ、回避の隙を付いて四方八方からネフィリムに襲い掛かり──辺りの空間ごと吹き飛ばした。
確かに不可神は強力な力だ。だが殲騎もネフィリムも接近戦を主体としている。
故に長距離からその防御を破りうる攻撃さえあったならば、十分に対抗しえる。
「残敵を掃討。増援が来ないうちに片付けて撤収するぞ」
砲塔が吼え爆音が響き──壊滅状態となった部隊が撤退していくまで僅かな時間しかかからなかった。


○第7話 窮極を求めしモノの亡霊(上)

2096年6月17日16時30分
 「まもなく目標地点です。本艦は上空で光学迷彩を展開し、待機します」
ミラニアルトの通信。
「さて、此処からが本番だ。レイウッド、ライム、突入するぞ」
転送機で地上に降下しロケットランチャーで前方の丘を撃ち雪を吹き飛ばす。
我ながら乱暴な方法だとは思うが、最も得意であり、単純であるからこそ効果的だ。
吹き飛んだ雪の下から覗いたシャッターに更に攻撃を加えて破る。
「行くぞ。敵がいる可能性もある。油断するな」
2、3発砲撃を撃ち込んでから先陣を切って突入する。
戦闘はいい。破壊の嵐の中でなら他の事を考えないで済む。
死と破壊の応酬に酔えば神紅鵺の事も、己が愚かしさも忘れられる。
砲撃で現れた敵や隔壁を粉砕し、奥へと進む。



 まったく僕は運が悪い。
改めてそう思う。というか不幸極まった気もする。
歩いていたらいきなりヴァイオレンスな関係の人達に因縁をつけられ路地裏へ。
やばい、と思ったときにいきなり現れた正体不明の人達──顔を隠していた──がヤクザ達を昏倒させ、
こっちを見て、
「素体にするには申し分ない」
とか言って……
気が付けば体の感覚が無く、目も見えない。
いったいどうしたんだと思っているところに何か遠くから爆発音が聞こえてきて、
まだ処置の途中とか、貴重なサンプルとか不穏な単語が含まれる声。
何かろくでもない事をされた気もする。
そのうちに爆音が大きくなり、数名が走り去ったと思われる足音。
とりあえず解るのは、さようなら平穏な日常、ということくらいか。
爆音以外に悲鳴や怒号も聞こえる様になった。後破砕音。
妙に細かい音まで聞き分けれる。何故だろう。
視覚がぼんやりとだが戻って来た。
手術台の天井のようだ。
やっぱり何かされたな~
……何やら苦しくなってきた。生命維持装置とかが止まったのかもしれない。
…待て。納得いかない。こんな人生。
だがどうにも出来ない。
いや待て、こんな最後は嫌だ。
すぐ近くで銃声、剣戟音、断末魔。
銀色の髪と引き込まれそうな、いや、落ちて行きそうな深い青い瞳の誰かに覗き込まれた。
「お前はまだ正気か? 」
声からして女性だと思われるそいつが聞いてきた。
正気?いきなりなんだろう?
「正気のようだな」
一人で納得して更に質問。
「死にたくないか? 」
それは当然だ。正常な生物は死にたくないと本能レヴェルで思っている。
「人として死ぬか人でなくなって生きるか選べ。死なら、瞬きを2回、生なら3回しろ」
どういうことだ? やばい…意識が…
3回瞬く。
「では受け取るがいい」
何かを取り出した音。それを何かしたようだが、そのあたりで意識がブラックアウト。



 スィルヴァフィルは通路を走りながら思いを巡らせた。
出撃前にエルヴェイルにその体を構成しているナノマシンを分けてもらい、
それを元に生前の自身の姿を再現したのだが…武器までは再現できなかった為、
適当な武器を使用しているのだが、それはさておき、兎に角スィルヴァフィルは思いを巡らせた。
「こうして肉体を持って戦うのも久しぶりだ…やはり元々物質の体を持つ種にとっては肉体が在ったほうが落ち着くな…」
前方から機械兵が2体接近。
「大半はエルヴェイルがやったようだな…どけ、邪魔だ」
手にしたマシンガンを発砲。
機械兵達はそれを気に留めず接近してくる。
──命中。装甲で防がれる。
「ち…面倒だ。雑魚は消えるがいい」
そう言って彼女は顔の上半分を覆っていた仮面を外す。
現れたのは虹色の瞳──この世ならざるモノの眼──特級の魔眼。
次の瞬間、その視界に捉えられた機械兵が砕け飛ぶ。
即座にスィルヴァフィルは仮面を着け直す。
「魔眼が復元できたことも、それと共に仮面が復元できたことも僥倖と言うべきか」
…先を急ぐとしよう。この身の復元率を高めるために有効なモノが有る可能性は比較的高い。
エルヴェイルが此処を崩壊させる前にそれがあるなら見つけておきたい。


○外伝1

「何かを失った者など山ほどいる?自分だけが特別不幸だなどと思うな?
そんな人間らしい感情、当の昔に無くしたよ」
「心などとうに壊れている。この存在は既に狂った機械だ」
「貴様ら常人に───理解など出来ぬ」───神紅鵺





 「────つまり、私の目的は世界の法則の改変。すなわち神になる事だ。
そのためには友であろうと手にかける。
それでも私についてくるのか?」
「何を今更。たとえ他に誰もお前の味方がいなくなっても、余だけはお前の味方だ」
「フ…好きにしろ」

あの日交わしたたったそれだけの会話。
それで十分だった。
それだけで原罪を超える罪を犯す────それを共に為す決意を示すには。





温かき肉より冷たき鋼を
優しき心より精密なるプログラムを
この身は既に金属
心は既にシステム
我は人にあらざる機械
異端なる機械
我は…世界改変機関
原罪を超える罪を犯す
其の為だけの存在なり





 何もいわずに彼らは去った。
かつて共に戦った友たちの前から、
世界に戦争を仕掛ける為
止められる前に。
それが、せめてもの、最後の情。


○外伝2

「今は無くとも、いつか永遠不変の真の正義に辿り着けるはずだ。
それを信じて、私は人類の革新の刻まで戦い続ける」───ヒロ・フォルヴァス



第5話外伝

 町に爆炎が上がる。黒い艦が上空から光線を放ち地球側の軍を蹴散らした。
その光景を眺めるものがいた。
「わが子孫とはいえ、情け容赦ないな。少しは手加減してやれ」
その霊は呟いた。
周りに誰かいるでも無し、いたとしても霊の声を聞けるものは限られるが。
実の所暇で仕方が無い。死者が退屈を感じるというのもおかしな話だが。
「暇潰しに丁度良いか」
そう言って彼女は戦場───もう戦闘は終りつつあったし一方的なものを戦闘とは言わないが───
戦場のほうに向かった。


○外伝 終焉の刻

 世界を支える概念が崩壊し書き換えられていく。
彼の望んだ世界に。
それを見ながら彼女は呟いた。
「まだ地球に改変の影響が出るまでは時間がある───
ヒロ、シュテルンケッツァーをこの宇宙の外に出す。お前ならそいつを役立てれる筈だ」
「神紅鵺…」
目的は果たしたものの、それを願ったものはもういない。
ただ空しさと寂しさが残るのみ。
空っぽの空に空っぽの心を抱え、彼女は漂い続けた────
「目的が無くなったな…」
「………」


……………
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